古いスマホやパソコン、捨てたり売ったりする前に知っておくべき個人情報対策:データ消去の方法
使わなくなったスマホやパソコン、そのまま処分しても大丈夫?個人情報のリスクについて
長年使ってきたスマートフォンやパソコンを機種変更したり、もう使わないからと処分したりすることがあるかもしれません。とても便利なこれらの機器ですが、実は皆さんの大切な個人情報が大量に保存されています。例えば、写真や動画、連絡先、メール、インターネットの閲覧履歴、会員サービスのログイン情報など、数え切れないほどの情報が含まれています。
これらの情報が、機器を処分する際に不適切な方法で行われると、思わぬ形で第三者に漏れてしまう危険性があります。個人情報が漏洩すると、詐欺に利用されたり、悪用されたりといった被害につながる可能性も否定できません。
では、安心して機器を処分するためには、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。ここでは、古いスマホやパソコンを捨てる、売る、譲渡する前に必ず確認しておきたい「データ消去」について、分かりやすくご説明します。
なぜ「初期化」だけでは不十分な場合があるのか
スマートフォンやパソコンには、「初期化」という機能があります。これは、購入時の設定に戻す機能で、一見すると保存されているデータもすべて消えるように見えます。しかし、実はこの初期化だけでは、データの「見た目」を消しただけで、専門的な方法を使えば、完全に削除されていないデータの一部が復元されてしまう可能性があるのです。
例えるなら、本の目次から項目を消すようなものです。目次には載っていませんが、本のページにはまだ内容が残っている、というイメージです。悪意のある第三者が、データ復旧ソフトなどを使うと、機器に残されたデータのかけらから情報を復元しようと試みることがあります。
そのため、個人情報が詰まった機器を安全に処分するには、単なる初期化ではなく、データを完全に読み取れなくする「データ消去」という作業を行うことが非常に重要になります。
安全なデータ消去の具体的な方法
安全にデータを消去する方法は、機器の種類やOS(オペレーティングシステム)によって異なりますが、いくつかの代表的な方法があります。
スマートフォンの場合
スマートフォンの場合、OSの機能としてデータ消去オプションが提供されていることが多いです。
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iOS(iPhone)の場合:
- 設定アプリを開きます。
- 「一般」を選びます。
- 下の方にある「転送またはiPhoneをリセット」を選びます。
- 「すべてのコンテンツと設定を消去」を選び、画面の指示に従って操作します。これにより、iPhone内のデータが暗号化された状態で消去され、復元が難しくなります。作業前にiCloudなどからサインアウトしておくことも重要です。
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Androidの場合:
- 設定アプリを開きます。
- 「システム」または「システムと更新」などを選びます。(機種によって表示が異なります)
- 「リセットオプション」または「リセット」などを選びます。
- 「すべてのデータを消去(出荷時リセット)」を選び、画面の指示に従って操作します。機種によっては、データを完全に消去するための追加オプションがある場合もありますので、確認してみると良いでしょう。こちらも作業前にGoogleアカウントなどからサインアウトが必要です。
多くのスマートフォンのOSでは、最近のバージョンであれば、この初期化と同時に強力なデータ消去が行われるようになっています。ただし、念のため、ご利用の機種やOSのバージョンについて、メーカーの公式サイトなどで確認することをお勧めします。
パソコンの場合
パソコンの場合、OSの機能や専用のソフトを使ってデータ消去を行います。
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Windowsの場合:
- Windows 10以降であれば、OSの機能としてドライブ(データを保存している場所)をクリーンアップする際に、データを消去するオプションを選ぶことができます。設定から「更新とセキュリティ」→「回復」→「このPCを初期状態に戻す」を選び、「ファイルと設定をすべて削除する」を選択した後、「データを消去」や「ファイルを削除してドライブをクリーンアップ」のようなオプションを選ぶと、より強力な消去が行われます。
- 古いWindowsやより確実を期す場合は、市販のデータ消去ソフトを利用する方法もあります。
- パソコンメーカーが独自のデータ消去ツールを提供している場合もありますので、お使いのメーカーのサポート情報を確認すると良いでしょう。
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Macの場合:
- MacのOSであるmacOSには、「ディスクユーティリティ」というツールがあり、これで起動ディスク(macOSがインストールされている場所)を消去する際に、セキュリティオプションで「データを完全に消去」といった設定を選ぶことができます。macOSのバージョンによって手順が異なりますので、Appleのサポートページなどで確認してください。macOSを再インストールする際に、同時にディスクの消去を行うことも可能です。
物理的に破壊する方法
データ消去ソフトなどによる方法に加え、ハードディスクやSSDといったデータを保存している部分を物理的に破壊するという方法もあります。穴を開けたり、強い磁気を当てたり、砕いたりすることで、データの読み取りを不可能にします。
ただし、これは専門的な知識や工具が必要な場合が多く、感電などの危険も伴います。個人で行うよりも、自治体のリサイクルサービスや、不用品回収業者、パソコンメーカーなどが提供している「データ消去サービス」を利用することを検討する方が安全で確実な場合が多いです。これらのサービスでは、専門の設備を使って安全かつ確実にデータを破壊してくれます。
データ消去以外に注意すべきこと
機器の本体のデータ消去だけでなく、他にも確認しておきたい点があります。
- SIMカードやSDカード: スマートフォンを使っている場合、電話番号情報などが記録されたSIMカードや、写真などのデータが保存されたSDカードが挿入されていることがあります。これらは本体とは別に抜き取って、安全に保管するか、必要に応じて適切に処分してください。特にSIMカードは、契約情報と紐づいているため、抜かずに処分してしまうとトラブルの原因になる可能性もあります。
- 各種アカウントからのサインアウト: スマートフォンやパソコンで、Googleアカウント、Apple ID、SNSのアカウント、ショッピングサイトのアカウントなどにログインしたままになっていないか確認してください。新しい機器へのデータ移行が終わったら、古い機器からは必ずサインアウトしておきましょう。
- 付属品の確認: 充電器やケーブル、取扱説明書なども忘れずに確認し、必要であれば一緒に処分するか、新しい機器で利用できるか確認しましょう。
まとめ:安心して機器を処分するために
古いスマートフォンやパソコンには、皆さんの大切な個人情報がたくさん詰まっています。これらの機器を捨てる、売る、譲渡する際には、単にデータを消去したつもりになるのではなく、ご紹介したような適切な方法で「データ消去」を行うことが非常に重要です。
- スマートフォンのOS機能や、パソコンのOS機能・データ消去ソフトを利用してデータを消去する。
- より確実にしたい場合や、ご自身での作業に不安がある場合は、専門のデータ消去サービスや物理破壊サービスを検討する。
- SIMカードやSDカードは必ず抜き取る。
- 各種アカウントからサインアウトする。
これらのステップを踏むことで、個人情報が第三者の手に渡るリスクを大幅に減らし、安心して機器を処分することができるでしょう。ご自身の情報資産を守るために、ぜひ適切な対策を行ってください。