公共機関やお店で見かける「顔認証」、あなたの顔情報は安全ですか?
公共機関やお店で増えている「顔認証」とは?
近年、公共機関やお店などで「顔認証システム」が導入される事例が増えています。例えば、店舗での支払い、イベント会場や施設の入退場、空港での本人確認などに使われることがあります。
カメラに顔を映すだけで、手続きがスムーズに進む便利な技術として注目されていますが、「自分の顔の情報がどのように扱われるのだろうか」「安全なのだろうか」と、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、顔認証の基本的な仕組みと、私たちの顔情報が個人情報としてどのように扱われるのか、そして安全に利用するための注意点について解説します。
顔認証システムはどのように動くのですか?
顔認証システムは、カメラで撮影した顔の画像を使って本人を識別する技術です。しかし、単に写真と見比べるだけではありません。
システムは、撮影された顔から目や鼻、口などの位置や形状、それらの配置といった顔の「特徴点」を詳細に分析します。そして、これらの特徴点から生成される固有のパターンや数値を「顔情報」として登録・記憶します。
次に、本人確認を行う際には、再度カメラで顔を撮影し、その場で得られた顔情報と、あらかじめ登録しておいた顔情報を照合します。この二つの顔情報が一致すれば、本人であると判断される仕組みです。
重要な点として、システムが保存・利用するのは多くの場合、元の顔画像そのものではなく、顔の特徴から抽出された数値やパターンデータです。これは、指紋認証や声紋認証が、指紋の画像や声そのものではなく、その特徴をデータ化して使うのと似ています。
顔情報は「個人情報」にあたるのですか?
はい、顔認証システムで利用される顔情報は、日本の「個人情報保護法」において「個人識別符号」というものに該当し、法律で保護されるべき「個人情報」として扱われます。
「個人識別符号」とは、特定の個人を識別できるように、その身体の特徴などをデータ化した情報のことです。顔の骨格や特徴から抽出された情報もこれに含まれます。
したがって、事業者が顔認証システムを導入して顔情報を取得・利用する際には、個人情報保護法が定めるルールに従う必要があります。
事業者は顔情報をどのように扱う必要がありますか?
個人情報を取り扱う事業者には、個人情報保護法によって様々な義務が課されています。顔認証システムで顔情報を扱う場合も同様です。主に以下のような点が求められます。
- 利用目的の特定と公表: 何のために顔情報を取得し、どのように利用するのかを具体的に決め、利用者にはっきりと知らせる必要があります。例えば、「店舗での決済のため」「施設の入退室管理のため」といった具合です。
- 適正な取得: 不正な手段で顔情報を取得してはいけません。通常は、顔認証を利用すること、その目的などを明示し、利用者の同意を得て取得することが求められます。
- 安全管理措置: 取得した顔情報が漏えいしたり、不正にアクセスされたりしないように、技術的・組織的な対策を講じる義務があります。例えば、データを暗号化する、アクセスできる担当者を限定するといった対策です。
- 第三者への提供制限: 原則として、本人の同意なしに第三者へ顔情報を提供することは禁止されています。
- 開示、訂正、利用停止などの請求への対応: 利用者本人から、自分の顔情報がどのように扱われているか知りたい、間違っている場合に訂正してほしい、利用をやめてほしいといった求めがあった場合、原則としてこれに応じる義務があります。
これらのルールは、事業者が顔情報を責任を持って管理し、利用者のプライバシーを守るために重要なものです。
顔認証サービスを利用する際に私たちができることは?
顔認証システムを利用する際に、完全に不安を取り除くことは難しいかもしれませんが、いくつかの点に注意することで、より安心して利用することができます。
- 掲示や説明を確認する: 顔認証システムが導入されている場所には、通常、その旨を知らせる掲示や説明が置かれています。何のために顔認証を使っているのか、事業者はどこか、といった点を確認しましょう。
- プライバシーポリシーを読んでみる: ウェブサイトやアプリで顔認証を利用する場合は、事業者のプライバシーポリシーに、顔情報の取り扱いについて詳しく書かれていることがあります。専門的な言葉も多いかもしれませんが、「顔情報を取得しているか」「利用目的は何か」「どれくらいの期間保存されるのか」「問い合わせ先はどこか」といった項目だけでも目を通してみると参考になります。
- 利用しない選択肢があるか確認する: 顔認証が必須ではなく、代替手段(現金やカードでの支払い、手動での入退室など)がある場合は、そちらを利用することも可能です。ご自身の判断で、利用するかどうかを決めましょう。
- 疑問があれば問い合わせる: 顔情報の取り扱いについて分からないことや不安なことがあれば、遠慮せずに事業者に問い合わせてみましょう。事業者は個人情報保護法に基づき、誠実に対応する義務があります。
まとめ
顔認証システムは、私たちの生活を便利にする可能性を持つ技術です。一方で、利用される顔情報は法律で保護されるべき大切な個人情報です。
システムを提供する事業者は、個人情報保護法を遵守し、顔情報を適切に管理する義務があります。そして私たち利用者も、顔認証が利用されている場所やその目的に関心を持ち、必要に応じて事業者へ問い合わせるなど、主体的に関わることが大切です。
顔認証を正しく理解し、そのメリットとリスクを把握することで、私たちはより安心してこの技術と向き合うことができるでしょう。