パスワードの管理、どうすれば安全?個人情報保護のための基礎知識と対策
はじめに:パスワードはなぜ大切なのでしょうか
インターネット上の様々なサービスを利用する際、ログインのために「パスワード」を設定することが一般的です。このパスワードは、いわばあなたの「鍵」のようなものです。大切な個人情報や、サービス上で作成したデータ、友人とのやり取りなどを守るための、最初の、そして非常に重要な扉を守っています。
「なんとなくいつも同じパスワードを使っている」「パスワードが多くて覚えられないからメモしている」といった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、パスワードの管理の仕方が適切でないと、あなたの個人情報が危険にさらされる可能性があります。
この記事では、パスワードがなぜ個人情報保護に重要なのか、そして安全なパスワードの作り方や、覚えきれない場合の管理方法について、分かりやすくご説明します。
パスワードが漏れるとどうなる?個人情報への影響
もしあなたのパスワードが第三者に知られてしまったら、何が起こる可能性があるのでしょうか。
まず考えられるのは、あなたが利用しているサービスに勝手にログインされてしまうことです。例えば、オンラインショッピングサイトのアカウントが悪用され、身に覚えのない買い物をされたり、登録しているクレジットカード情報が盗まれたりする危険があります。
また、メールやSNSのアカウントに不正にログインされると、過去のやり取りや登録情報、さらには友人や家族の連絡先までが漏洩する可能性があります。勝手にあなたの名前で不審なメッセージが送られ、周りの人に迷惑をかけてしまうことも考えられます。
さらに、多くのサービスで同じパスワードを使い回している場合、一つのサービスからパスワードが漏れると、他の多くのサービスでも同じパスワードを試され、次々と不正ログインされてしまう「リスト型攻撃」という手口の被害に遭うリスクが高まります。このように、パスワード一つが原因で、様々な個人情報が芋づる式に漏洩してしまう危険性があるのです。
安全なパスワードの作り方:避けるべきこと、取り入れるべきこと
では、どのようにすれば安全なパスワードを作れるのでしょうか。安全なパスワードにはいくつかの共通する特徴があります。
避けるべきパスワードの例
- 推測されやすいもの: 誕生日、電話番号、名前やペットの名前、簡単な単語(password, 123456など)。これらは第三者が容易に推測したり、辞書を使った攻撃で特定したりしやすいパスワードです。
- 短すぎるもの: 文字数が少ないと、コンピューターによる総当たり攻撃(考えられる全てのパターンを試す方法)で短時間で破られる可能性が高まります。
- 同じパスワードの使い回し: 前述のように、一つが破られると全てが危険になります。
安全なパスワードのポイント
- 長くする: 最低でも8文字以上、可能であれば10文字以上にするのが望ましいとされています。文字数が長いほど、解析に時間がかかり、安全性が増します。
- 様々な種類の文字を混ぜる: 大文字、小文字、数字、記号(!, ?, #, &など)を組み合わせることで、パスワードのパターンが非常に増え、推測や解析が難しくなります。
- 予測しにくい文字列にする: 意味のある単語の羅列ではなく、無意味に見える文字列や、自分だけがわかる法則に基づいた文字列にすると安全です。
例えば、「好きな言葉」+「大切な日付」+「よく使う記号」のように、自分にとって意味がありながら、他人には推測できない組み合わせを考えるのも一つの方法です。ただし、それをそのまま使うのではなく、文字の順序を変えたり、間に数字や記号を挟んだりといった工夫を加えると、さらに安全性が高まります。
複数のパスワード、どうやって管理する?
安全のためにサービスごとに異なる複雑なパスワードを作るべきだと分かっていても、「そんなにたくさんのパスワード、覚えきれない」と感じる方は多いでしょう。安全かつ現実的なパスワードの管理方法をいくつかご紹介します。
- パスワード管理ツール(パスワードマネージャー)を使う: これは、あなたのアカウント情報(サービス名、ID、パスワードなど)を暗号化して安全に保存し、必要な時に自動で入力してくれるアプリケーションやサービスです。一つの強力なマスターパスワード(このパスワードだけはしっかり覚える必要があります)で、他の全てのパスワードを管理できます。多くのパスワードマネージャーは、安全なパスワードを自動生成する機能も持っています。信頼できる提供元のパスワードマネージャーを選び、そのマスターパスワードだけは絶対に忘れないように注意してください。
- 安全な方法でメモする: 紙に書き出す場合は、自宅の金庫など第三者の目に触れない安全な場所に保管してください。ただし、紛失のリスクは常にあります。デジタルでメモする場合、そのままテキストファイルに保存するのは危険です。パスワード管理ツールを使う方が遥かに安全です。どうしてもメモが必要な場合は、パスワード自体をそのまま書くのではなく、パスワードを生成するためのルールやヒントを、自分だけが分かる形で書き残すといった工夫も考えられますが、パスワードマネージャーの利用が最も推奨される方法です。
- 二段階認証・多要素認証を利用する: パスワードによる認証に加え、SMSで送られてくるコードや、認証アプリが生成するコード、指紋認証など、別の方法で本人確認を行う仕組みです。たとえパスワードが漏れても、もう一つの認証要素がなければログインできないため、セキュリティが大幅に向上します。利用できるサービスでは、積極的に設定することをお勧めします。
日常生活で気をつけたいこと
パスワードの作成や管理だけでなく、日々のインターネット利用でもいくつか注意することで、個人情報とパスワードを守ることができます。
- 不審なメールやメッセージに注意する: 「アカウントに問題が発生しました」「個人情報が漏洩した可能性があります」といった件名のメールやメッセージで、偽のログイン画面に誘導し、パスワードを入力させようとする「フィッシング詐欺」が後を絶ちません。公式サイトからの正式な連絡かよく確認し、安易にリンクをクリックしたり、個人情報やパスワードを入力したりしないようにしましょう。
- 公共の場所にあるパソコンでの利用を避ける: インターネットカフェなど、不特定多数の人が利用するパソコンでログインすると、パスワードが記録されてしまう危険性があります。極力、自宅の安全な環境にあるご自身のパソコンやスマートフォンを利用しましょう。
- ソフトウェアを常に最新の状態に保つ: ご利用のOS(Windows, macOSなど)やブラウザ(Chrome, Safariなど)、セキュリティソフトなどは、常に最新の状態にアップデートしてください。これにより、発見されたセキュリティ上の弱点が修正され、不正アクセスなどのリスクを減らすことができます。
まとめ
パスワードは、インターネット上の様々なサービスであなたの個人情報を守るための、非常に重要な「鍵」です。安全なパスワードを作成し、適切に管理することは、個人情報保護の第一歩と言えます。
推測されにくい、長く複雑なパスワードを設定し、サービスごとに使い分けることが理想的です。全てのパスワードを覚えるのが難しい場合は、信頼できるパスワード管理ツールを活用することを検討してください。そして、利用できるサービスでは積極的に二段階認証を設定しましょう。
パスワード管理に完璧はありませんが、今回ご紹介したような少しの工夫と注意を積み重ねることで、個人情報が危険にさらされるリスクを大きく減らすことができます。できることから一つずつ取り組んでみてください。